かきものCOLUMN

みつばち社会〜働き蜂⑧職人の技が光る!みつばちの部屋作りの巻・前編

  • 2017.10.19
  • by Yoko

成長に伴い、様々な仕事に取り組む働き蜂。
羽化してからの内勤期(10日〜20日)には、
巣房作りにも取り組んでいます。
蜂蜜や花粉を貯蔵したり、子育てをしたり、
時には頭を突っ込んで一休みする(本当にそんな風に休むそうな)、
そんな、みつばちにとっての部屋=巣房作りは
どんな風に行われているのでしょうか。
見ていきましょう。

巣の素材は自分で作る

みつばちのお腹

このワックスミラーからロウを分泌します

みつばちの巣は、
みつばちが分泌するワックス=蜂ろうで作られます。

(体のどこから蜂ろうを出しているのか、どう処理していて、
どれだけの労力がかかるすごいことなのかについては、
以前書いたこちらの記事を御覧ください)

ちなみに、ミツバチ研究者のタウツは、
「ミツバチは、巣板の材料を自分で造り出すという点で、動物界のエリートに属する」(丸野訳、2010)なんて、
初孫を可愛がるおじいちゃんみたいなことを言っています。
(彼の著書はミツバチ愛に満ちていて、表現もなんだかドラマチックなものが多いので
読んでいるとクスりと笑えておすすめ)

他には「ロウと蜜の間には敏感な需要–供給の関係がある。貯蔵庫が手ぜまになれば、ハチは体内に蜜を貯めておかざるを得ない。多くの個体でこの状態がつづくと、その一部はロウに転換され、貯蔵庫新設の材料が造られる。人類が出現するはるか以前に、彼らは昆虫仲間での”産業革命”に成功した。」(坂上、1983)なんて風にも言われていたり。

えらいよ、ミツバチ。

みつばちのルックス

一斉に一気に作る

さて、そんな「動物界のエリート」たちはどうやって巣房を作っていくのでしょう。

最も活発に巣房が作られるのは、分蜂直後。
新しい住処を見つけたミツバチたちは、早速巣房を作り始めます。
蜂ろうを作り出すにはとてもエネルギーが必要なのですが、
その際のエネルギー(=蜂蜜)は古巣から飛び立つ際に、
蜜胃いっぱいに蓄えて旅立っているのです。

分蜂 触る

新しい巣に移ろうとして一旦木にとまった分蜂群に指を差し込んでみる。みんな人間に構っちゃいられないくらいお腹いっぱい精一杯。

とはいえ、蓄えとして持ってこれているのはせいぜい5000個の巣房を建築できる程度のもの。
中ぐらいの規模の巣の巣房が約1000,000個であることを思うと全然足りていない。
小規模どころの話ではない。
ということで、巣の建築が速やかに行われるとともに、花蜜の収集も即開始されるのです。
(ほんと、いつも働き者だけど、分蜂直後はひときわ大忙しだなぁ。。。)

①下地を塗る

そんな巣房作りは上部に下地を塗るところから始められます。
まず、蜜蝋の塊を塗りつけます。
どうやって塗りつけるかというと、
自分の腹部の腺から分泌した、コンタクトレンズのようなロウを、
後ろ足の櫛のようになっているところで器用に取り、
口まで運び、強い顎で柔らかく扱いやすい温度と硬さになるまで噛んで練ります。
口内で練られたロウは、白色のリボン状に変わり、
このリボンを顎で噛みきり、ペタリと塗りつけるのです。

と、盲目のみつばち研究者ユーベルはそんな風に報告しているそう。
(優秀な助手との二人三脚で生涯研究を続けたのだとか。)

②ピン先のような初期の巣房、そして下絵作り

さぁ、下地を作ったら今度はそこに塗り重ねて
下へ下へと伸ばしていきます。
巣房の壁自体はとても薄い(0.07mm)のですが、
最初に基礎として作られるこの部分は、その10〜20倍ほども分厚いのです。
そして、一旦分厚く作った壁を、みつばちたちは両側から孔を掘っていき、
次第に薄くします。
そして削り取った材料は、下方の巣の土台作りに再度使われるのです。
こうして窪みがついた、巣房の下絵が出来上がります。

と、そんな観察をしてレポートしたのはダーウィンだそう。

③いよいよ6角形の巣房ができる

窪みのついた下絵が出来たら、今度はその絵に沿って、
一つの部屋ごとに仕切るべく壁をこしらえていきます。
働き手は絶えず入れ替わり、交代しながらロウを使って下絵に沿って壁面を作り上げ、
巣房を作り上げていくのです。

日本みつばちの巣

6角形はどうやってできるの?

さて、ここで、6角形の巣房は、初めは円柱としてできたものが部屋数の増加に伴い、
相互の圧力や熱によって、次第に6角形になるんだ、という説があります。
確かに、丸が合わさると6角形になっていくし、
ある種のハチの巣ではそうした経過が見られるといいます。

しかし、みつばちは違うのだ、という説もあるわけです。
私としては、6角形は初めから保たれているという説を支持したいなぁという気がします。
ということで、次回はここのところを坂上(1983)の紹介する、マーティンとリンダウアーの研究から見ていきます。

ということ、今回はここまで!
(6角形がどうやってできるのか、面白そうなんだけど読解が難しい!ぐぬぬ。)

 

参考文献
坂上昭一、1983、『ミツバチの世界』、岩波新書
Juergen Tautz、丸野内棣訳、2010、『ミツバチの世界 個を超えた驚きの行動を解く』、丸善出版

新型コロナウィルス感染症対策について