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みつばち社会〜働き蜂⑧職人の技が光る!みつばちの部屋作りの巻・後編

  • 2017.11.08
  • by Yoko

さて、みつばちの部屋作り後編です。(前編はこちら

みつばちの巣房は6角形のハニカム構造。
そのことを知っている人は多いと思いますが、
どのようにできているかはなかなか知らないのでは?
と言っても、実際に作っているところを観察するのは難しいので
(だってみんなモリモリに重なり合って代わる代わる巣を作っていくものだから現場は常に人だかりというか蜂だかり覆われているのですよ)、
研究者たちの報告などから、その部屋作りの様子を想像してみましょう。
今回は坂上(1983)の紹介する、マーティンとリンダウアーの報告を見ていきます。

マーティンとリンダウアーの報告

①規則性を作る首の毛
巣室は重力刺激を手掛かりに作られていくのではないか、と仮定して
500から1,000匹の働き蜂の頭と胸、胸と腹を接着剤で固定したり、
頭と胸と腹の接続部分の感覚毛を塗りつぶして固定した。
そして、どのように巣を作るかを観察した。
その結果、頸部の感覚毛が重要であることがわかった。
頸部の感覚毛が固定されている時、巣室のかたちは不規則な形をとる。
しかし、接着剤がはがれて感覚毛が機能を取り戻していくと、規則的な巣室が作られるようになることが観察された。

②滑らかな巣の壁
マーティンとリンダウアーは、
触覚が使えなくなったらどうなるのかという疑問から、
ミツバチの左右の触覚先端を除去した。(かわいそうだけど、研究者っぽいな)
すると何が起こったか。
正常な巣壁は滑らかでシワもなく、厚さも0.07~0.09mmと安定しているが、
触覚が除去されると、そうした精巧さは見られなくなった。
つまり、触覚先端は、巣壁の仕上げに欠かせない道具だということがわかった。

③壁の厚みはどう測る?
さて、そしてマーティンとリンダウアーの新たな疑問が生まれてきます。
精巧な巣壁を作る働き蜂、
だけど壁の一方側で働いているというのに
壁の厚みを均一にできるというのは何故なのだろうか。

二人は、触覚と大あごの形態学、そして巣壁に刺激を与えた際のたわみ方の研究から、
次のような仮説を立てます。
加工のために蜂が大顎で壁面に窪みをつけると、
窪みは、材料の持つ可塑性(この場合は、蜂が巣壁を齧り取って、巣壁は蜜蝋でできているので、齧られたことによる凹凸が緩やかに滑らかになっていくこと)によって、元の位置に戻る運動を起こす。
そして、巣の温度が均一な時(35度)、均一な材質で生じる、こうした復元運動は、
復元されるまでの時間経過が一定だとすると、窪みの位置や深さ、壁の厚みで復元具合が決まるという。
その際、働き蜂の触覚先端は、巣壁の加工部位を常に探っており、窪み、位置、深さ、復元具合などの諸所のパロメーターを記録している。そこから、壁の厚みを算出しており、以後の加工方針の決定に必要な情報を提供している。

ふむふむ。そして、ここから先のところがわからない・・・

「この仮説で注目すべき点は、すでに出来上がった六角中の枠組み内で仕事が行われるときにのみ、精密計算での正確な答えが得られることだ。巣室にわずかなゆがみを与えるだけで、ロウの復元運動は影響される。造られつつある巣盤下方の生長部では、六角形はまだお粗末だし、巣壁は厚く不揃いである。同じことが女王室の外壁表面の模様にも示されている。つまり六角形と均一な薄い巣壁は、相互に影響し合って形成されていくのである。」(坂上 1983:25)

何度も読んだのですが
3つ目の最後らへんは、今ひとつどういうことなのかよく分からず。
しかし、何やら面白そうなことを書いているなぁと思ったのでした。
誰かわかったら教えてください。

そしてマーティンとリンダウアーが報告してる話ではないけれど、
みつばちたちの巣作りで、これまた不思議なのは、
複数箇所から作り始めることが可能だということ。
精密な6角形の巣房、だけど、上から鐘乳石のように伸びていく巣房は、
一見するとバラバラに作られていくにもかかわらず、
見事に連結して、一枚の巣になっていくのです。

どうやって測っているのかしら。
彼女らの謎です。

蜂たちの鎖

この巣作り作業の際によく見られるのが、
みつばちたちが鎖のようにつながって、カーテン状になっている様子。
しかも、長時間、動かずにいる。
この理由はいろいろ言われているのですが、
正確な理由はわからないというのが多く見られる見解です。

ふむ。

ある説では、
巣を本格的に作り始める前の見取り図・下地として、
自分たちでつながって見ているのだという人もいます。(タウツ、2010)

またある説では、一晩そのままじっとしておくと、
翌日、腹部に薄いうろこ状の蜂ろうが分泌されていて、
みつばちはその状態のまま、みつばちの鎖を伝って上までよじ登り、
蜂ろうを大あごで噛んで柔らかくして、
天井に一片を器用に貼り付けていく。
そうやって左官のごとく、代わる代わるにせっせと施工というか

作業を行っていくのだとか。(坂上、1983)

あるいは、縄ばしごのように、
床に落ちてしまったうろこ状の蜂ろうを拾い集め、
巣房作りをしているところまで運び上げる役割なのか。(タウツ、2010)

こんな具合にみんな色々と予想してみていますが、
「僕としては◯◯という理由なんじゃないかと思うんだよね。知らんけど。」という感じ。

分蜂球の中に手を入れた時も、
手を抜くときにブラーンとひっついていたりしたのだけど、
なんか連結しがちな生き物なのかな。知らんけど。

ついてきた蜂たち

指先にくっついてきたみつばちたち

 

今日はここまで

さて、今回は働き蜂の内勤期のお仕事、部屋作りについて見てきました。
人間にはわからない、みつばちたちの設計術が光る巣房作りの技。
何のためだかわからないけれど、鎖のように手足を取り合ってぶら下がったり、
ファスナーがピタリと閉じるように、バラバラのところから建設していた巣房が綺麗に連結したり、
みつばちは不思議だなぁ!

内勤のお仕事、まだまだ次回も続きますよ!

参考文献
坂上昭一、1983、『ミツバチの世界』、岩波新書

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